2011-02-16

ヘッドフォンアンプの制作

概要

オペアンプ入力、ダイアモンドバッファ出力のヘッドフォンアンプです。いわゆる「SAITAMA-HA7(改)」です。

overview

本稿ではユニバーサル基板での試作例を紹介します。専用基板での制作例は下記リンク先をご覧ください。

設計

基本的にSAITAMA-HA7のままですが、手持ち部品の都合で、若干の定数変更をしています。電源部はVirtual Ground Circuitsを参考にしたレールスプリッター回路で仮想グランドを作りますので、電池やACアダプタなど単電源で動作します。OPアンプは1回路入りDIP8Pが使用できます。筆者はOPA134/OPA604/OPA627で動作テストをしました。

回路図(PDF)

オリジナルのSAITAMA-HA7は、ダイアモンドバッファのトランジスタに2SC1815/2SA1015を使用しています。本機でも、そのままでも構いませんが、試作時に音質の良かったトランジスタ2SC2240/2SA970を採用しました。トランジスタの違いはOPアンプ以上に音質に影響します。制作に当たり、トランジスタの特性の選別はしていません。なお、電源部のみ2SC1815/2SA1015を1個ずつ使用しています。それ以外のトランジスタは未評価です。

コンデンサは、電源部の1uFのみOS-CONを使用し、それ以外の抵抗とコンデンサは低価格汎用品を使用しています。制作をされる方は各自好みのパーツを選択してください。

電源は5V~15Vを推奨します。OPアンプによっては、5Vでは電圧が低すぎて動作しない場合がありますので、使用するOPアンプのデータシートで電源電圧を確認してください。電圧を上げる時には、OPアンプだけでなく、LEDの電流制限抵抗の値も見直してください。ちなみに、2SC1815/2SA1015より2SC2240/2SA970の方が電圧は高耐圧ですが、コレクタ電流は前者の方が大きいです。厳密には計算していませんので、上の回路図のトランジスタと抵抗の定数では、わずかに定格外かもしれません。気になる方はSAITAMA-HA7の電流制限回路の説明を読んで、定数を調整してください。出力の4.7Ω→10Ωくらいに変更すれば、まず問題ないと思います。

なお、ミュート回路は付けていません。

参考回路定数

下図が「そらみみ版SAITAMA-HA7(改)」の標準回路です。

reference

input

入力部(左/右)

OPアンプはOPA134(OPA2134)、トランジスタは、ダイアモンドバッファに2SC2240/2SA970、保護回路に2SC1815/2SA1015、レールスプリッター回路(上のPDFの回路図参照)に2SC2120/2SA950を使用しています。オリジナルのSAITAMA-HA7はすべて2SC1815/2SA1015ですが、もちろんその通りに制作しても構いません。その場合は音の明瞭度や音場の再現性が若干劣ります。

コンデンサはお好みで品種や容量を変えても構いません。抵抗値はできるだけ図の通りにしてください。

実装

秋月B基板に実装します。できるだけジャンパの少ないレイアウトになるよう工夫しました。主要な回路は基板面積の2/3程度に収まります。

topbottom

配線図(PDF)

※回路図では100uFとしている電解コンデンサが、この配線図では47uFとなっています。実際に作る際には、容量は適当でいいと思います。

試聴

OPA134/OPA604/OPA627で試聴を行いました。筆者は抵抗やコンデンサの音質の差もわからないような糞耳の持ち主な上、音源が酷いとか、入出力にシールド線を使ってないとか、ヘッドフォンがしょぼいとか、いろいろ微妙なところはありますが、参考までに。

ヘッドフォン: SONY MDR-CD900ST、JVC HA-MX10

音源: Mac mini のオーディオ出力

試聴曲: 谷山浩子、遊佐未森、笠原弘子、ルルティア、サラ・ブライトマン、等

評価のポイントは、残響音や反射音など、微細な間接音が破綻していないかどうかに注目しました。この特性が良いと、音に立体感が生まれ、定位が良くなり、楽器の存在感が引き立ちます。音質の良し悪しというより、筆者個人の好き嫌い(聴いていて楽しいかどうか)で評価することにします。

評価結果

OPA134 > OPA627 >>> OPA604

OPA627

総じて良い音なのですが、余計な味付けが一切ありません。さすが、低歪みです。その反面、優等生な割に面白味に欠けると思いました。リファレンス用のOPアンプには最適かもしれません。

OPA604

平面的で立体感がありません。間接音が別の音にかき消されている感じがしました。高音が若干騒がしいように思いました。

OPA134

筆者の好みの音でした。

微細な音の再現性が非常に高いです。音数の多いドラムフィルでは、ドラムセットの個々の楽器がちゃんと定位します。重厚なベースの背後で微かになっているシンセパッドなどもよく聴こえます。ひとつひとつの楽器が確かな存在感を伴って鳴ります。かと言って、細身になることもなく、広い空間の中に音場が広がります。英語の発音も、唇や舌使いまでよく聞き取れます。一言でいえば、音が見えて手が届きそうな感じです。

こういうのを味付けがされた音というのかもしれませんが、情景がよく伝わってくるし、聴いていて楽しいので良しです。

総評

OPA134のコストパフォーマンス高すぎです。OPA627は1ペアは持っておいても良いでしょうが、値段も高いしこれ以上いらないです。OPA604はちょっといまいちです。ヘッドフォンアンプ以外でマッチする用途はないかなぁ、と思いました。